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この資料は昭和48年3月26日に発行されたものです。この頃は、まだ無農薬栽培でお茶を育てるといる。と言ったお茶屋さん(茶園)は数も少なく、とても珍しかったとも言えます。この頃からすでに、私ども吉村茶園では無農薬栽培をしてきました。このことは当園の誇りでもあり、完全に農薬を使わないお茶をお客様に安心してご提供できる自信にもつながっております。

岐阜県恵那郡福岡町における無農薬栽培茶園の紹介



 作物を無農薬で栽培するということは、農薬の公害の面からも、望ましい姿であるといえる。しかしながら現実では、経営の面から、このような栽培を行うことは至難なことである。

 ここでは、1971年7月に、開園以来20年間まったく無農薬で栽培を続けているという岐阜県恵那郡福岡町の茶園について、病害虫の発生状況と茶の収量、品質を調査したもので、その結果を紹介する。

 調査した福岡町の茶園(吉村恒重氏所有)は木曽川支流の付知川流域に位置し、土壌は花こう岩を母岩とした第四紀新層で、腐植はほとんどなく、土壌の塩基置換容量がきわめて低いため流亡がひどく、一般に肥料の効果が低いとみられる茶園である。標高は430〜450mで、2〜3月の寒害がひどい。付近にはラジウムで知られる苗木鉱泉がある。

 調査団は周囲が雑木林と水田に囲まれた約1/5勾配の傾斜茶園である(写真の矢印の茶園)。品種は6年生のやぶきたと約20年生の実生の在来種で、面積は合計約1haである。施肥量はほぼ基準量とみられ、茶の摘採は通常一番茶と二番茶の年2回である。

 薬剤散布については、聞きとりではあるが、病害虫予防のための薬剤配布はもちろん、除草剤散布も開園以来全く行っていないとのことで、その形跡も認められない。園主の話によると、この付近には、恵那郡付知町、加子母村、坂下町などを合わせて無農薬栽培の茶園が約20haもあるという。なお、調査したこの農家には茶園の他にかなりの面積の水田もあったが、水田に作られた水稲やそ菜では、標準量またはそれ以上の農薬を必要とするとのことであった。この点、茶園との比較で注目に値する。

 調査園における病害虫の発生状況は、静岡県など一般の茶園と同様に、チャノホソガ、チャノキイロアザミウマ、ウスミドリメクラガメ、カンザワハダニなど17種類の害虫と、白星病、炭そ病、もち病など5種類の 病害が発生してたが、ウスミドリメクラガメを除いて他はいずれも発生が非常に少なく、要望除水準に達していなかった。ウスミドリメクラガメについてはその習性から、付近の雑草で繁殖したものが飛来、加害したものだとみられた。

 天敵は調査園が無農薬栽培ということもあって種類、数量とも多かった。確認された天敵の種類は13種類であるが、一般慣行防除茶園に比べて、とくにクモ類が多いことが注目された。なお、クモ類はハナグモとクサグモが主体であった。

 調査園の生葉収量は10a当たり一番茶で平均約600kg、二番茶で平均約700kgで、静岡県などの一般農家の収量と大差なかった。しかし、茶の品質については、味は強かったが、いくらかうま味に欠けるようで、当面、品質向上が問題となりそうであった。

 調査園における病害虫発生制御の要因については、はっきりしたことはわからなかったが、調査の範囲では土質と天敵が大きな役割を果たしているものと考えられた。

 もちろん、以上の結果は岐阜県の一農家の無農薬栽培茶園の実態を調べただけのものに過ぎない。しかしながらこの結果は、農薬濫用ぎみともいえる今日において、手段を講ずれば無農薬またはそれに近い栽培が、経営的にみても、決して不可能ではないということを示唆しているものとして注目される。 (刑部 勝)

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